R7 騒音・振動特論 問13
問題
周波数分析器に関する記述として、誤っているものはどれか。
- (1) オクターブバンド分析器は、定比帯域幅形の分析器である。
- (2) オクターブバンド分析器でホワイトノイズを分析すると、各帯域音圧レベルは一定値となる。
- (3) オクターブバンド分析器と1/3オクターブバンド分析器で、同一のピンクノイズを分析すると、同じ中心周波数のバンドで約5dBの差がある。
- (4) オクターブバンド分析器の各帯域フィルタの中心周波数をfm(Hz),下端周波数をf1(Hz)、上端周波数をf2(HIz)とおくと、fm=√f1f2の関係がある。
- (5) オクターブバンド分析器の隣り合う帯域の中心周波数の比は2、又は1/2である。
解説
この問題は、周波数分析器(オクターブバンド分析器など)の特性と、それを用いた際のノイズ(ホワイトノイズ・ピンクノイズ)の現れ方について問うものです。
1. 誤っている選択肢:(2)
記述内容:
「オクターブバンド分析器でホワイトノイズを分析すると、各帯域音圧レベルは一定値となる。」
誤りの理由:
ホワイトノイズではなく、ピンクノイズを分析した場合に一定値となります。
詳細:
ホワイトノイズは「単位帯域幅(1 Hz)あたりのエネルギー」が一定のノイズです。しかし、オクターブバンドは高周波側ほど帯域幅が広くなる(倍々になる)性質があるため、高い周波数のバンドほど含まれるエネルギーが大きくなり、音圧レベルは右肩上がり(+3 dB/oct)になります。
2. その他の選択肢(正しい記述)
(1) 定比帯域幅形:
オクターブバンド分析器は、中心周波数に比例して帯域幅が広がるため、定比帯域幅形に分類されます。
(3) 5 dBの差:
オクターブバンドの帯域幅は1/3オクターブバンドの約3倍です。エネルギー比3倍をデシベルに換算すると 10 log3 ≒ 4.8 dB となり、約 5 dB の差が生じるのは計算上正しいです。
(4) 中心周波数の定義:
中心周波数 fm は、下端周波数 f1 と上端周波数 f2 の幾何平均(fm = √(f1 × f2))で定義されます。
(5) 周波数の比:
「オクターブ」という言葉自体が周波数2倍を意味するため、隣り合う帯域の比は 2 又は 1/2 となります。
まとめ:試験対策のポイント
周波数分析の問題では、以下のノイズ特性の組み合わせを暗記しておくことが非常に重要です。
|
ノイズの種類 |
物理的特性 |
オクターブ分析結果 |
|
ホワイトノイズ |
1 Hzあたりのエネルギーが一定 |
高域ほどレベルが上がる(+3 dB/oct) |
|
ピンクノイズ |
オクターブあたりのエネルギーが一定 |
全帯域で平坦(一定値) |
「一定値になるのはピンクノイズ」という鉄則を覚えておけば、この種の問題は即座に正解を導き出せます。
正解.
2
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お世話になっております。
明らかに(2)が間違っているので正解は(2)でいいんですが
(5)も正しいとは言えないのではないでしょうか?
正確には10^0.3倍(=1.995)であり、2倍ではなく
公称中心周波数も16Hzの次が31.5Hzと、2倍でないところがあります。
ご質問ありがとうございます!
本試験において選択肢(5)が「正しい(誤りとは言えない)」と扱われるのには、
「オクターブという言葉の本来の定義」と、JIS規格における「実務上のキリのいい丸め(公称値)」という2つの背景があるからです。
受験生の皆様に向けて、この疑問の背景を分かりやすく解説します。
1. なぜ「2倍」ではなく「10の0.3乗(約1.995)倍」なのか?
実は、オクターブバンドフィルタの設計規格(JIS C 1514)には、設計の流派(基準)が2つ存在します。
・2基準システム(Base 2 system)
「オクターブ(八度音程)」の本来の定義通り、周波数比をちょうど「2倍」(1/3オクターブなら2の3分の1乗 = 約1.2599倍)とする設計方法です。
・10基準システム(Base 10 system)
音響工学のデシベル計算(常用対数)との相性を良くするため、周波数比を「10の0.3乗(=1.99526…)倍」、1/3オクターブを「10の0.1乗(=1.2589…)倍」とする設計方法です。
10基準にすると、3オクターブ上がったところがちょうど「10の0.9乗 = 約10倍(1ディケード)」になり、対数方眼紙などの目盛りと非常に美しく一致します。
JIS規格では、この「2基準」と「10基準」のどちらでフィルタを設計しても良いと定められています。
そのため、本質的・概念的な定義を説明する試験の選択肢においては、オクターブの本来の言葉の意味である「中心周波数の比は2」という表現が基本として使われ、正しい記述として扱われます。
ご指摘の通り、精密な「10基準」で設計された実機では1.995倍ですが、概念的には「ほぼ2倍(オクターブ=2倍)」とみなして問題ない、という割り切りが試験上なされています。
2. なぜ「16Hz ➡ 31.5Hz」のように、2倍になっていないところがあるのか?
16Hzの2倍は32Hzのはずなのに、なぜ規格では「31.5Hz」になっているのでしょうか?
これには、「設計上の計算値」と、人間が見て分かりやすいように丸めた「公称値」の違いがあります。
JIS規格では、1000Hzを基準(スタート地点)として、そこからオクターブごとに上下する周波数を計算します。
「10基準システム(10の0.3乗倍)」で1000Hzから低い方に下がっていくと、精密な計算上の中心周波数は以下のようになります。
1000Hz ➡ 501.19Hz ➡ 251.19Hz ➡ 125.89Hz ➡ 63.10Hz ➡ 31.62Hz ➡ 15.85Hz ➡ 7.94Hz…
これをそのまま「31.62Hzバンド」や「15.85Hzバンド」と呼ぶと、小数点以下がついて実務上非常に扱いにくいですよね。
そこで、JISなどの工業規格では、これらに極めて近くて人間がパッと見て覚えやすい「キリの良い数字」を「公称中心周波数」として定めています。
・計算値:15.85 Hz ➡ 公称値:16 Hz
・計算値:31.62 Hz ➡ 公称値:31.5 Hz
・計算値:63.10 Hz ➡ 公称値:63 Hz
このように、表示されているラベル(公称値)が「16 ➡ 31.5」となっているため一見すると2倍になっていないように見えますが、
内部の物理的なフィルタの設計特性(計算上の中心周波数 15.85 Hz ➡ 31.62 Hz)は、極めて正確に10の0.3乗(約1.995)倍、またはちょうど2倍で設計されています。
3. 試験対策としての向き合い方
公害防止管理者試験(騒音・振動)では、こうした実務的な「丸め誤差」や「JIS規格上の許容される設計流派の違い」による細かなズレは、深く突っ込まれない傾向があります。
試験を突破するための現実的なアプローチとしては、以下のように割り切るのがスマートです。
(1)「オクターブ = 比率は2(又は1/2)」、「1/3オクターブ = 比率は 2の3分の1乗(約1.25)」という大枠の公式を基本知識として持っておく。
(2)選択肢(2)の「ホワイトノイズを分析すると平坦(一定)になる ➡ 誤り(正しくはピンクノイズ)」という、試験において100%誤りと言える「ド本命のひっかけ(超頻出ポイント)」を確実に見抜く。
(3)(2)が明らかに誤りであるため、(5)の「2倍」のような表現は、Base 2(2基準システム)の基本的な定義を述べているものとして「正しい」と受け入れる。
このような背景を理解しておくと、試験本番で細かい表記の揺れに出会っても、迷わずに自信を持って正解を選択できるようになります!
解説ありがとうございます。
Base 2なら公称中心周波数は16→31.5→63→125ではなく倍々になるのでは?と疑問を抱きましたが
いただいた解説とJIS C 1513を併読し、Base 10でも2でも公称値は変わらないことを確認し、電話帳の説明不足ということで納得しました。