R4 騒音・振動特論 問1
問題
膨張形消音器を用いて 200 Hz における伝達損失が最大になるようにするには,膨張部の長さをおよそ何 m にすればよいか。ただし,音速は 340 m/s とする。
(1)0.125
(2)0.225
(3)0.325
(4)0.425
(5)0.525
解説
膨張型消音器の伝達損失について、以下の式が成り立ちます。
R=10log[1+1/4・{m-(1/m)}2・sin2 (kl)](dB)
- m=S1/S2=(D1/D2)2 :膨張比
- S:断面積(m2) D:直径(m)
- k=2πf/c
- f:周波数(Hz) c:音速(m/s) l:膨張部の長さ(m)
この式において、特にsin(kl)=sin(2πf/c×l)が重要です。
sin部分だけに注目すると、
90度(π/2)、270度(π/2×3)、450度(π/2×5)・・・
のときに伝達損失が最大になることがわかります。
90度(π/2)のとき、200Hzの場合を求めます。
(2×3.14×200)/340 × l =3.14/2
l=340/(2×200×2)=0.425(m)
伝達損失の式は複雑で覚えづらいですが、損失が最大になる条件はよく問われますので、この問題のような計算はできるようにしましょう。
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解答.
4
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90度の時を求めていますが、270度の時は値が変わると思います。
概要を含めどういうことなのかご教授願います。
ご質問ありがとうございます!
結論から言うと、ご推察の通り270度で計算すると値は変わります。
「90度、270度、450度…」という角度は、消音効果のグラフにおいて「効果が最大になる山の頂上(ピーク)が、繰り返し何度もやってくるタイミング」を表しています。
これがどういうことか、「長さ」と「周波数」の2つの視点から解説します。
1. 長さ(0.425m)を固定した場合の見方
解説で求めた「長さ 0.425m」の消音器を作ったとします。
実はこの消音器、200Hzの音だけをピンポイントで消すわけではなく、以下のように奇数倍の周波数で次々と消音効果のピークを迎えるという性質があります。
・90度(最初のピーク)のとき:一番低い基本の周波数である 200Hz の音を最大に消してくれます。
・270度(2番目のピーク)のとき:200Hzの3倍である 600Hz の音に対しても、最大の消音効果を発揮します。
・450度(3番目のピーク)のとき:200Hzの5倍である 1000Hz の音に対しても、最大の消音効果を発揮します。
2. 周波数(200Hz)を固定した場合の見方
逆に、「どうしても200Hzの音を消したい」という目的で設計(長さを逆算)する場合を考えてみましょう。
・90度(最初のピーク)の条件で設計すると:解説の通り、長さは 0.425m になります。
・270度(2番目のピーク)の条件で設計すると:公式に当てはめて計算すると、長さは0.425mの3倍である 1.275m になってしまいます。
物理的には、1.275mの長さで作っても200Hzの音を最大に消すことは可能です。
しかし、実際の工場の現場では「わざわざ巨大な装置にする必要はなく、なるべくコンパクト(短く)作りたい」ですよね。
そのため、実務や試験の設計計算においては、一番短く作れる「最初のピーク(90度)」の条件を使って長さを決定するのが基本(セオリー)となっています。
まとめ
「90度、270度…のときに最大になる」というのは、「基本の周波数の奇数倍(1倍、3倍、5倍…)で、何度も最大の効果を発揮する」という意味です。
長さを問われる計算問題が出た際は、一番コンパクトな基本設計である「90度(π/2)」を基準に計算すると覚えておきましょう!
なるほど!
そういうことなのですね!
270度(2番目のピーク)の条件で設計すると公式に当てはめて計算すると、長さは0.425mの3倍である 1.275m
ここなのですが、
(2×3.14×600)/340 × l =(2*3.14)/3 より、
l=(2*340)/(3*2*600)=0.188m
となると思うのですが、
(周波数と角度(今回では2π/3)が変わる)
ここの解説をお願いしたいです。
ご提示いただいた計算式を確認したところ、数値がズレてしまった原因には「① 角度(ラジアン)の変換の勘違い」と「② 計算の目的(周波数と長さのどちらを固定するか)の混同」の2つがありました。
とても惜しいところまで到達していますので、この2つのモヤモヤをスッキリと紐解いて解説します。
原因①:270度のラジアン表記(角度の変換)
公式の右辺にある角度について、(2×3.14)/3(つまり 2π/3 = 120度)を代入されていますが、ここが最初の計算のズレの原因です。
公式において伝達損失が最大になる条件は、以下のようになります。
・90度 = π/2
・270度 = 3π/2(または 1.5π)
つまり、右辺に入る正しい角度の数値は (3×3.14)/2 となります。
原因②:「何を固定して計算するか」の違い
前回の解説で私がお伝えした「2つの見方」を数式でどう表すかが、もう一つのポイントです。
パターンA:【周波数を200Hzに固定】して長さを設計する場合
前回の解説の「1.275m」というのは、「どうしても200Hzの音を消したい(f=200 で固定)」という前提で、あえて270度(2番目のピーク)の条件で設計した場合の長さです。
これを数式に当てはめると以下のようになります。
(2 × π × 200) / 340 × l = 3π / 2
両辺の π を消して整理します。
400 / 340 × l = 1.5
l = (1.5 × 340) / 400
l = 510 / 400 = 1.275 m
これが「1.275m」の正体です。
パターンB:【周波数を600Hz】とした場合
ご質問の式では左辺の周波数に f=600 を代入されていました。これに、原因①で修正した正しい角度(3π/2)を当てはめて計算してみましょう。
(2 × π × 600) / 340 × l = 3π / 2
両辺の π を消して整理します。
1200 / 340 × l = 1.5
l = (1.5 × 340) / 1200
l = 510 / 1200 = 0.425 m
最初の解説で求めた「基本設計の 0.425m」という数字に戻ってきました。
これは、前回の解説の「見方1」でお伝えした『0.425mで作った消音器は、200Hzの音(90度)だけでなく、600Hzの音(270度)に対しても最大の効果を発揮する』という事実を証明したことになります。
まとめ
・200Hzの音を、270度の条件で消そうとすると → 1.275 m 必要
・600Hzの音を、270度の条件で消そうとすると → 0.425 m で済む
このように、「何を目的として計算しているか」を意識しながら公式を触ってみると、難解な消音器の設計問題もパズルのように面白く解けるようになります。